帰山人の珈琲漫考
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コーヒーの真実?
2011/09/08 05:00

これぞ「コーヒーの真実」と言えるか? エチオピアコーヒーに関する興味深い記事を発見。
 
  「専門店から消えるエチオピアコーヒーの香り−商品取引所開設の余波」
  《…インテリジェンツィアのバイスプレジデント、ジェフ・ワッツ氏は「産地不
   明のコーヒーは販売したくない」と語る。同氏の言う産地不明のコーヒー
   とは、エチオピア商品取引所で取引される生豆のことだ。取引所での取
   引は、農産物市場の改善を目指す取り組みの一環だが、この取り組み
   により、米国のコーヒーディーラーが深刻な問題を抱えるようになった。
   …専門的なコーヒー業者は、エチオピアとの関係が崩れ、同国産コーヒー
   生豆のブランド力が損なわれていると嘆く。カナダのディスカバリー・コー
   ヒーのプリンシパルオーナー、ジョン・リオプカ氏は、エチオピア商品取
   引所の開所後、エチオピア産コーヒーを単一産地ブレンドのメニューか
   ら取り除いたと語った。》
   (2011年9月2日:bloomberg ブルームバーグ )
 
昨今のエチオピアコーヒーに関して、残留農薬問題よりも商標問題の方が(生産側と消費側との将来に残る)溝として大きいと主張している私だが、今般の記事は、日本のコーヒー業界では掩蔽するかのような、その国家・政治・流通経済の対立関係を見事に徴証する。
 
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ECX(Ethiopia Commodity Exchange:エチオピア商品取引所)は、いわゆるスペシャルティコーヒーなどの生産支援を積極的に進める機関かのようにも日本のコーヒー界では散見されるが、これは機関の本源を大きく誤解したものである。エチオピアにおける一次産品の国内流通と輸出価格の統制を目的に大豆など穀物取引の場として2008年4月に設立されたECXであるが、Eleni Zaude Gabre-Madhin(エレーニ・ガブレ・マディヒン)CEOと自国政府との共謀により同年10月よりコーヒー取引が扱われ始めた。名目はともあれ、その背景には2005年以来の産地ブランドによる商標化の目論見があり、これに憮然と反対したスターバックス社との和解(2007年6月)を契機に、コーヒー流通の統制一元化という国有化に近い画策を一挙に推し進めようとしたものであること、論を俟たない事実である。エチオピアコーヒーのECX制は、その国内生産量の約96%を占める輸出用コモディティコーヒーを9つの主要生産地(Yirgachefe、Sidama、Jimma、Harar、Limmu、Kaffa、Tepi、Bebeka、Lekempti)に分けて各10の等級に分類しようとしたもので(スペシャルティと国内用は現時点では分類が異なる)、4%にも満たないスペシャルティコーヒーを流通加速するより、コーヒー全体の価格を上げることを眼目として発足している。このECX制がエチオピアコーヒーに導入されるや、様子見と称して反発した卸売業者・買付業者は流通を差し止め、輸出量の約6%が消失(?)するという事態に陥り、さらに翌2009年にエチオピア政府によるECX制への参加勧告を拒否した6業者のライセンスが停止されている。その後も、コモディティコーヒーを主眼としたECX制には消費国側の反発圧力が続いており、2009年以降はSCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)などとの協調でQグレードと直接輸出制の導入が試されているが、課題が山積で早くも破綻し始めている現状である。
 
エチオピア政府のコーヒー生産国らしい策謀が、スターバックスとの係争を経て、具体化されたECX(エチオピア商品取引所)制、そしてECX制の余波でスターバックスのライバルと目される(?)北米大陸のコーヒー企業らが「トレーサビリティーを失ったエチオピアコーヒー」を嫌って愚痴る現状が先述の記事となっているワケである。この間に生じている残留農薬問題などは、私の憶測を加えれば、政治・経済における交渉能力に乏しい日本市場がハメラレタものとも考えられるのだが、その背景が改めて猿芝居であること以上に日本のコーヒー業界がエチオピア「コーヒーの真実」を捉えきれていない愚昧さは笑止だ。
 

カテゴリ:珈琲の記:2011

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